2013年4月23日火曜日

パレート効率性と囚人のジレンマ

あるゲームで各参加者に支配戦略が存在する場合、そのゲームは各参加者が支配戦略を選択する支配戦略均衡状態となることが予想される。

しかし、支配戦略均衡状態になったとしても、その状態が必ずしも「社会(集団)全体で最適な状態」となっているとは限らないというお話。

「社会全体で最適な状態」というのはどういうものかを考えるために、「パレート効率性」という考え方を導入する。

■パレート効率性とは?
ある集団が、1つの社会状態(資源配分)を選択するとき、集団内の誰かの効用(満足度)を犠牲にしなければ他の誰かの効用を高めることができない状態を、「パレート効率的(Pareto efficient)」であると表現する。また誰の効用も悪化させることなく、少なくとも一人の効用を高めることができるとき、新しい社会状態は前の社会状態をパレート改善(Pareto improvement)するという。言い換えれば、パレート効率的な社会状態とは、どのような社会状態によってもそれ以上のパレート改善ができない社会状態のことである。~Wikipediaより~

具体例として、AさんとBさんが1000円を分け合う場合を考える。この場合、AさんとBさんは自分の取り分が増えれば増えるほどうれしい(効用が大きい)。
  • AさんとBさんが300円づつ分け合う場合・・・これはパレート効率的ではない。なぜなら、例えばAさんが700円でBさんが300円を取るようにすれば、AさんもBさんも取り分を減らすことなく、配分できるからだ。
  • AさんとBさんが500円づつ分け合う場合・・・これはパレート効率的。なぜなら、この状態から配分を変更して片方の取り分を増やそうとすると、もう一人の取り分を減らさざるえないから。
  • Aさんが0円、Bさんが1000円・・・これもパレート効率的。なぜならこの状態からAさんの取り分を増やそうとするとBさんの取り分を減らさざるえないから。
最後の例のように、結果の公平性についてパレート効率性は考えない(Aさんかわいそう)。パレート効率性は、社会全体としての望ましい選択の「必要条件」ではあるが、「十分条件」ではないことに注意。

■囚人のジレンマ
パレート効率性が分かったら、本題の「支配戦略均衡はパレート効率とは限らない」というお話を囚人のジレンマを例に見る。
(例)
警察が共犯2人の身柄を拘束している。この時、
  • 2人とも自白しなければ、犯罪が立証できず、2人とも釈放(それぞれの利得 = 3)
  • 片方だけ自白した場合、自白した者は報奨金を得て釈放(利得 = 5)。自白しなかった者は通常よりも長い懲役になる。(利得=1)
  • 両方とも自白した場合は、通常の懲役(それぞれの利得 = 2)
とする。これを利得行列で表わすと以下の表になる。 

このとき、支配戦略均衡は両方とも「自白する」を選ぶことになる。
でも、これってパレート効率的ではない。
明らかにパレート効率的な状態は「両者が自白しない」状態であり、両者が合理的な判断をしたにも関わらず、パレート効率的な状況に至れない状況になっている。

結論として「支配戦略均衡状態になったとしても、その状態が必ずしも「社会(集団)全体で最適な状態」となっているとは限らない。」


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